EARTH VISION【地球環境映像祭】とは
 「EARTH VISION 地球環境映像祭」は、環境をテーマとしたさまざまな映像を通して地球環境について考えることを目的に、日本を含むアジア、オセアニア・ポリネシアに広く作品を公募し、コンペティション形式の上映会を行っています。地球環境をテーマとした映像であれば、作品のジャンル、プロ・アマチュアを問わない点が、この国際映像祭の大きな特長です。
 EARTH VISION は、1992年から毎年東京で開催、映像制作者を招き、観客との情報交換、交流の場も設けています。また、2002年には、ヨーロッパの5つの国際環境映像祭とともに、世界の国際環境映像祭のネットワーク「エコムーブ・インターナショナル」を設立。このネットワークでは、2年に1度国際環境映像祭の祭典 Ecomove を開催。加えて、国際的な上映イベントをおこなうことを通して、環境教育と環境映像の普及を進めています。
 今年は第13回を新宿区四谷区民ホールにおいて、国際映像祭を開催。事務局審査、事前審査で最終的に選ばれた16の入賞作品を上映します。またインド・オーストラリア・韓国・台湾・香港そして国内から監督を招待。入賞作品上映後には、監督からのあいさつや観客との質疑応答を予定しています。
●ホームページhttp://www.earth-vision.jP
(第13回国際映像祭は2月6日に終了)

1.タートル・ワールド 9分
【作品概要】
 広漠たる宇宙空間を旅する一匹の巨大ウミガメがいる。息を吐き出すたびに空気を生みだし、自らの背中に森や山を作りだす。その背中に住むのは冒険心に富んだサルたち。自然に恵まれた楽園に満足できず、サルは土地を開拓し始める。彼らのために資源を生みだしたウミガメの痛みを思いやりもせずに。
【監督の言葉】ニック・ヒリゴス
 タートル・ワールドは、この地球自身がひとつの偉大な生命体であるという、古代神話およびジェームス・ラブロックらのガイア理論に大きな影響を受けている。作品のカメは世界であり、創造者である。その湿った息は大気を作り、雨を生みだして、背中をおおう森をうるおす。そしてカメは木々の葉を食べる。しかし、背中の森で生活するサルたちは手遅れになるまで、自分が住む世界、地球の自然を理解しない。カメの新しい生命は海の中で生まれるが、サルたちの住む場所はもうどこにも存在しない。
 作品の撮影中に、やはりウミガメと地球のアース・ビジョン(地球環境映像祭)のイメージを目にし、まさにこの作品を出品するための映像祭と考えていたので、このような特別賞の受賞は、私にとって特に喜ばしい。
 この作品は1997年に、Festival lnternazionale deIFilm Turistico at Milan で Best Short Film、エコメディア国際エコロジカル映画祭でSpecial Award、Japan Wildlife Festival で Best Animation を受賞している。ニック・ヒリゴス

2.プラスチックの家のヤドカリ 21分
【作品概要】
 背中に貝をのせて波打ちぎわをのろのろ歩いているひげのある生き物。これが多くの人が抱くヤドカリの印象だろう。しかし、産業が発達するにつれてその姿も変わってきている。台湾墾丁国立公園の沿岸部にある森林では、プラスチック容器や割れたガラス瓶でさえも「宿」として使うヤドカリが増えている。さらに・ヤドカリは数セントから数ドルで安く売られているのである。
【監督の言葉】ウ・リヒョウ
私は長い間、台湾の海洋環境に関わる様々な問題を追いかけてきました。かつて海洋研究の専門家に簡単な調査に連れていってもらったとき、ゴミを背負ったヤドカリという異様な光景をこの目で目撃したのです。
 私はびっくりして、そのヤドカリを追いかけてフィルムに収めました。後に私が発見したのは、ヤドカリが現代を生きていくためには、棄てられたゴミを自分たちの棲みかとする方法を知るだけでなく、道路を渡ったり溝を越えたりすることも学ばなければいけないということでした。ヤドカリの悲惨な姿から海全体が抱える問題に対する危険信号が送られてきています。私はこのドキュメンタリーの撮影を通して、人々にこの小さな、しかし驚くべき物語を伝えたかったのです。

3.サイレント・ストーム 52分
【作品概要】
 1975年から1978年にかけて科字者たちは、人の命にかかわる毒物で、核実験の副産物でもあるストロンチウム-90を調査するため、21,000体以上のオーストラリア人の遺体から骨のサンプルを極秘裏に収集していた。この作品は公的機関が行っていた「遺体盗難」という驚くべき事例を明らかにしている。冷戦下に、オーストラリアで行われたイギリスの核実験について、人体に影響はないと主張するオーストラリア政府に対して、科学者ヘドリー・マーストンは放射性物質による汚染が広がっていることを突き止め、警鐘を鳴らした。マーストンの発表は論争を巻き起こしたが、彼はまた「機密情報を暴露した科学者」として非難されたのだった。世代間にわたるオーストラリア人の健康への影響はあるのだろうか?
【監督の言葉】ピーター・バット
 「サイレント・ストーム」のテーマは2つのオーストラリアです。1つは1950年代の楽観的な白人のオーストラリア。羊による富を得、ベビーブームを経験し、学校では毎日全ての生徒に無料で牛乳が配られていました。もう1つはより悲観的で、冷戦の中で共産主義の侵略を恐れて、自国の土地でのイギリスの核実験を受け入れたオーストラリアです。
 「サイレント・ストーム」は、牛乳の放射能汚染と、政治的に動機づけられた研究のために死体から骨を持ち去るという事態を引き起こした、この異なる2つの世界の衝突を映し出しています。
 この劇的で、しかしあまり知られていない物語は最近公にされた資料と核実験の最中に極秘の動物実験を行った科学者からの私的な手紙をもとに制作されています。彼の発見は今でも鋭い警告を発しています一どれだけ限定されたものであれ核戦争による放射性物質の降下がおきれば、それは人類にとって地球規模の問題となるでしょう。

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